第4話
数字の向こう側
「続ける理由」の記事には、こんなことが書かれていた。
投資信託を続ける人たちの声。それは、数字の上下に一喜一憂する話ではなく、もっと地味で、もっと静かなものだった。
「毎月同じ額を預けることで、相場が高い月も安い月も、自動的に調整される」「焦って売ったときの後悔の方が大きかった」「10年続けてみたら、自分の人生設計が見えてきた」
コメント欄には、数年単位で向き合った人たちの言葉が並んでいた。誰も、一夜にして富が増えたとは言っていない。むしろ、ゆっくりとした変化に気付いたとき、初めて何かが変わったと感じたようだ。
画面を眺めながら、自分が何を求めていたのかが、ぼんやりと見えてきた気がした。銀行員の「長期投資は気にしないこと」という言葉は、単なる気休めではなく、もしかして本当のアドバイスなのかもしれない。ただし、それは「無視する」ことではなく、「別の尺度で見つめ直す」ことを意味しているのではないか。
その夜、スマートフォンのアプリを見直してみた。基準価額の下落を悲劇のように感じていた自分。だが、それは同時に、来月の同じ金額で、より多くの口数が買えるということでもある。長期投資とは、そういう仕組みなのだ。
しかし、理屈で理解することと、心が納得することは別だった。月曜日、銀行員に会う予約を入れた。今度は、「いつ売るか」ではなく、「なぜ続けるのか」を聞きたかった。その答えが、投資信託という名の扉の向こう側にあるような気がしていた。
続きはまもなく
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