第3話
基準価額の沼
記事では「今すぐ売るべき」と警告していた。
投資信託を始めてから、世界が二つに分かれたような気がした。一つは、給料が入り、家賃や食費を払い、月1万円を積み立てる、変わらぬ日常。もう一つは、スマートフォンの画面の中に存在する、毎日動く数字の世界だ。その二つが、自分の心の中で激しく衝突している。
「長期投資は気にしないこと」と銀行員は言った。だが、毎日チェックしない自分は想像できなかった。特に、基準価額が下がった日は、その日一日が色褪せて見える。仕事中も、ぼんやりと「今いくらになっているだろう」と考えてしまう。
金曜日の夜。いつものようにアプリを開いた。先週比で2.3パーセント下がっていた。計算すると、投じた3万円は2万9,100円になっていた。先月よりさらに減っている。
そのとき、ふと思った。自分が焦っているのは、3万円という金額を失うことが怖いのではなく、その先にある何かなのではないか。この先、本当に増えるのか。20年も30年も、このモヤモヤと付き合い続けるのか。それとも、どこかの時点で売って、この不安から解放されるべきなのか。
パソコンの前に座り直した。今度は検索キーワードを変えてみた。「投資信託 失敗」ではなく、「投資信託 続ける理由」と。
そこに書かれていたのは、数字の話ばかりではなかった。
続きはまもなく
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