第2話
数字が踊る夜
初めての運用報告書は、予想より早く届いた。封筒を開いたとき、数字の羅列を前にして、自分が何をしているのか改めて実感した。
月1万円を預けてから3ヶ月。合計3万円を投じた投資信託の現在価値は、2万9,500円だと書かれていた。500円のマイナスである。微々たる損失のはずなのに、画面を見つめながら息が止まった。
「試しのような投資」という言い訳は、この瞬間に崩れ落ちた。お金が減っている。銀行口座の数字が目に見えて減少するのとは違う、もどかしい感覚。定期預金なら確実に増えていたはずの利息分を、失ったのだ。
スマートフォンのアプリで毎日のように基準価額をチェックし始めたのは、その翌日からだ。朝起きると真っ先に見る。通勤電車の中でも見る。夜寝る前にも見ている。2万9,500円が2万9,600円に戻ったとき、心がふわりと浮いた。その反対に、2万9,200円に下がったとき、妙な焦燥感に襲われた。
職場の同僚には口を滑らさないようにしている。会社の昼休みに投資信託の話を聞かされるのは、今は避けたかった。自分がまだ何も理解していないことが、ひどく丸裸に思えたからだ。
家に帰ってから、パソコンで検索した。なぜ変動するのか、いつ売るべきか、本当に長期投資で成功するのか。答えを探した。だが情報が多すぎて、むしろ頭がモヤモヤしていった。ある記事では「20年単位で考えなければ意味がない」と言い、別のブログでは「3年で利益確定すべき」と述べられている。
その夜、妻に「ちょっと心配なんだよ」と漏らした。妻は、淡々と答えた。
「毎月1万円って、ボーナスまで入れたら月給の何パーセント?」
その問いに、自分ははっと立ち止まった。割合で考えたことがなかった。割合で考えるということが、まだできていなかったのだ。
続きはまもなく
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