棚卸しの先にあるもの

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第4話

問い直すということ

上司の言葉は、予想外だった。

「あの案件、お前のやり方で」という提案は、単なる仕事の指示ではなく、自分の棚卸しが誰かの目に映っていたことを意味していた。スキルシートに自分で書き込んだ「クライアント対応」「トラブル解決」は、自分だけの認識ではなく、周囲にも見えていたのだ。

駅のベンチに座り、スマートフォンを開いた。スキルシートはもう見ていない。代わりに、これまでの仕事の場面を思い返していた。どの瞬間が、誰かにとって価値だったのか。後輩が頼ってきた時のことも、クライアントが安心した表情も。それらは自分では「当たり前」と処理していたが、実は異なる視点を持つ人間には見える景色だったのだろう。

母へのメールの返信をどうするか。実家に帰ることについて、まだ答えは出ていない。だが、親に何を与えられるか、という視点は新しかった。それは依存と自立の関係を、ただ一方向で捉えていた自分を問い直す視点でもあった。

夜10時、会社からのメールが届いた。明日、あの案件について話し合いをしようという上司からのメッセージだ。キャリアの停滞は、まだ解決していない。ただ、その停滞を眺める自分の視線が、少しずつ変わり始めていることに気づいた。

完成しないスキルシート。見えてきた輪郭。そして、問い直し続ける自分。

明日は、別の問いが始まるのだろう。

続きはまもなく

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