第7話
第7話 「選び直す」
スーパーの照明は相変わらず明るすぎた。だが主人公の目は、以前ほど眩しさを感じなくなっていた。
野菜コーナーで立ち止まる。トマト、ニンジン、玉ねぎ。今夜の献立に必要なものだけ。かつてなら、見切り品コーナーをのぞき込み、「安いから」と理由を後付けして買い物かごに入れていただろう。あるいはスープの素、ドレッシング、ふりかけ。「あると便利」という言葉に吸い寄せられるように。
今、主人公は違う選択をしている。
レジに向かう途中、ふと缶詰のコーナーが視界に入った。かつて自分がストックしていた、段ボール三箱分の缶詰たち。引越し前、あれらをほとんど処分したことを思い出す。消費期限が近づくなかで、焦って食べたり、結局捨てたり。その時間と心労も、ごみも、すべて「念のため」から生まれていた。
缶詰を一つ手に取った。今夜、本当に必要か。
主人公は、それを棚に戻した。その動作は迷いではなく、確信に近かった。
帰宅して、台所に立つ。シンプルな食器、最小限の調味料。調理する時間は短くなったが、その間の心地よさは増していた。余計なものがないから、手が動く音、水が流れる音、そうした日常の小さな音が聞こえるようになっていた。
食事を終え、ソファに座る。手には、最近買った一冊の本。ページをめくる。読み始めてから気づいたが、本を選ぶ時も、自分は変わっていた。タイトルの煽りに動かされるのではなく、まず目次を見る。自分が本当に知りたいことが書かれているか。
外では、夜の街が相変わらず光と音で満ちている。だが、その中にいてなお、主人公の部屋には静寂がある。
それは空白ではなく、選択の積み重ねだ。
明日も、何かを選び直す。その繰り返しが、自分をどこへ連れていくのか。主人公は、ようやくその問いを持つ喜びを知った。
続きはまもなく
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