第4話
透明性の重さ
ロードマップ公開から二週間が経った。開発は順調だった。だが同時に、新しい葛藤が生まれていた。
ある機能の実装で、当初の見積もりが大きく外れたのだ。予定では三日で完了するはずが、想定外のバグに直面し、一週間かかることが確定した。ロードマップでは「今月完了」と明記している。ユーザーはそれを見て、スケジュールを立てているかもしれない。
前話までの自分なら、こっそり予定を遅らせ、ユーザーに気付かれないように対応していたかもしれない。だが、「対等な関係」という言葉が頭に残っていた。
有料ユーザー向けに、遅延の理由と新しい完了予定日を報告することにした。完璧ではない自分の判断ミスまで、包み隠さず。
クリックして送信ボタンを押すまで、三時間悩んだ。
反応は、やはり予想を超えていた。数人のユーザーが返信をくれた。その中には、「計画通りにいかないことは誰にでもある。むしろ報告してくれるだけでいい」というメッセージもあれば、「その遅延、うちのチームなら予防できたかもしれない。打ち合わせしませんか」という提案もあった。
しかし、全員が肯定的だったわけではない。ある有料ユーザーは、その後ツールの利用を止めた。理由は明かされなかった。
その夜、自分は新しい問いに直面していた。透明性は本当に正解なのか。それとも、ユーザーごとに異なる「透明性の度合い」というものがあるのか。
翌朝、別のユーザーからメッセージが届いていた。遅延を知ったうえで、「その間、他の改善に時間をかけてほしい」という提案だった。
対等な関係は、単に情報を共有することではなく、その情報をどう受け取るかまで、ユーザーに委ねることなのだと気づき始めた。だが同時に、その責任の重さに、初めて直面していた。
続きはまもなく
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