毎日の小さな習慣

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第8話

習慣の向こう側

昨夜、野菜を一つ変えてみた。いつもの組み合わせを少し崩し、冷蔵庫の奥にあった食材を引き出した。何か新しい料理にしようと思ったわけではなく、ただその瞬間、退屈さを感じたからだ。

そうすると、不思議なことが起きた。手が少し立ち止まった。いつもの動きが通じなくなり、改めて考える余白が生まれたのだ。新しい食材をどう扱うか、どんな味になるか、そこに主体性が戻ってきた感覚があった。

三週間目に入った今、毎日が同じようなリズムを持ちながらも、まったく同じ日ではなくなっていた。小さな工夫の繰り返しが、習慣を習慣のままにさせない。完璧な効率を手放すこと。それが、退屈さから自分を守る唯一の方法だったのかもしれない。

朝、冷蔵庫を開ける。仕事が忙しい日も、そうでない日も、その前に少し立ち止まるようになった。今日はどうしようか。その問いが、外食アプリを開く指を、今も止めている。

完全に習慣化することはもうないだろう。毎日が小さな選択の積み重ねになった。手間は減らさず、ただその手間と向き合い続ける。その営みそのものが、いつからか習慣になっていた。

スマートフォンは、相変わらず手の届く場所にある。けれど、もう握ることはない。必要な時に、考えて手に取る。その一呼吸が、毎日を変えていくのだと、今ようやく気づき始めている。

(完)

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