ページの向こう側

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第2話

感情の地図

彩は、先輩のメモを眺め続けた。確かに、これは読書記録というより、読書中に心が動いた痕跡だった。

「でも……読みながらメモを取るって、読書の邪魔にならないんですか?」

彩の質問に、先輩は首を傾げた。

「逆なんです。読みながら手を止めるから、その時の感覚が残るんですよ。『あ、ここ違和感があるな』って気づいた瞬間に、手を止めて、その気持ちを言葉にする。そうすると、その違和感が記憶に焼き付く」

先輩はノートをめくり、あるページを指した。そこには「なぜ?」という疑問符が何度も繰り返され、その周りに小さな落書きが散らばっていた。

「この本を読んでた時、主人公の行動が理解できなくて。だから『なぜ』って何度も書いた。その時は答えが出なかったけど、本の後半で、その疑問が解ける。その時の『あ、そういうことか』っていう感動が、ずっと残ってるんです」

彩は自分の胸に手を当てた。『異郷の旅人』を読んでいた時、確かに何度も立ち止まりたくなった瞬間がある。でも、先を知りたくて、そのまま読み進めてしまった。

「試してみませんか」

先輩は彩に、新しいノートと何色かのペンを差し出した。

「今から何か読む時に、『ここ面白い』『ここわからない』『ここ不気味』とか、そういう一言だけでいいから。その瞬間の気持ちを、とにかく逃さない。後で見返すと、その時のあなたが本とどう向き合ってたか、全部思い出せるから」

彩はノートを受け取った。白いページを前に、これまで試したことのない読書が始まろうとしていた。

続きはまもなく

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