映画館の住人たち

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第3話

夕暮れの映画館

座席チェックの途中、僕は一つの席に立ち止まった。カップホルダーに、誰かが置き忘れたチケットの半券が折り畳まれていた。上映時間の欄には、午後一時からの作品名が印字されていた。朝に見かけた中年の男性のものだろうか。それとも別の誰かのものか。

僕はそれを拾い、チケット売場に戻った。先輩に見せると、彼女は「忘れ物ボックスに入れておこう」と言った。その声は淡々としていたが、僕にはその言葉の向こうに、毎日繰り返される光景が見えた。

午後五時近くになると、映画館の空気が変わり始めた。仕事帰りだろうか、スーツを着た大人たちが一人また一人と入ってくる。彼らの多くは足早で、すぐに上映室へ消えていく。ただし一人の女性だけは違った。

彼女はロビーに立ち止まり、上映スケジュール表をしばらく眺めていた。その表情には、何かを探すような真摯さがあった。あるいは、何かから逃げるような切実さがあった。僕にはそのどちらなのか判断がつかなかった。

夕陽がロビーの窓を通して射し込む時間帯、映画館は一日の中でも独特の表情を見せる。スクリーンから漏れてくる上映中の音、ポップコーンの香り、あちこちから聞こえる足音—それらすべてが交錯する。

先輩は横で、ドリンクカウンターの在庫をチェックしていた。「毎日こんな感じだね」と僕が呟くと、彼女は微笑んで答えた。「そう。でもね、同じ日は一日もないんだよ」その言葉の意味を、僕は完全には理解していなかった。ただ、夜へ向かう映画館の中で、その言葉だけが静かに響き続けた。

続きはまもなく

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