第2話
昼下がりの来館者
朝礼を終えた僕は、チケット売場の横でポップコーンを詰める作業に当たっていた。昼下がりの映画館は、朝とは違う空気に満ちている。
「いらっしゃいませ」と先輩の声がした。中年の男性がやってきた。一人で来ている。チケットを買う際、彼は迷っているような素振りを見せていた。上映時間を何度も確認し、館内図をじっと見つめていた。
僕は先輩の言葉を思い出していた。毎日違う顔をしている映画館。その顔の違いを作るのは、やってくる一人ひとりの人間だ。
その男性が映画を見終わって出てきたのは、二時間後のことだった。彼の表情は、入館時とは明らかに変わっていた。何かが変わった。それが何であるかは、僕には分からない。けれど、その変化を目撃した気がした。
午後三時を過ぎると、子ども連れのグループが次々と現れた。小学生たちの声が館内に響く。親たちは疲れたような、それでいて満足したような顔をしていた。
席の案内をしながら、僕は気づいた。映画館は、映画を見る場所ではあるが、同時に何か別のものでもあるということを。それが何であるかはまだ言葉にならない。だが確実に、僕の中で何かが形作られ始めている。
「新人くん、夕方の座席チェック、お願いできる?」先輩が声をかけた。今日も色々な人たちがやってくるだろう。その思いを胸に、僕は席を回る準備をした。
続きはまもなく
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