まっしろな資産簿

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第4話

第4話 最初の揺らぎ

申し込みから一週間。主人公の口座には、最初の1万円が投資信託へ変わっていた。

数字は思っていたより小さく見えた。画面に表示された「評価損益」の欄には、プラス148円と書かれていた。

148円。一週間で増えた。

主人公は何度も画面を閉じて、また開いた。佐藤の言葉を思い出す。見ないこと。待つこと。でも、この148円は何を意味しているのだろう。

その夜、大学の友人・橋本からLINEが来た。「最近、投資信託始めたんだって?」

「どうしてわかったんですか?」

「佐藤から聞いた。俺も去年からやってるよ。でなあ、気をつけた方がいいことがある」

橋本のメッセージは続いた。「一週間で148円増えたからって、調子に乗ったらダメ。明日マイナスになるかもしれない。投資信託ってのは、短期で判断する商品じゃないんだ」

それから二日後。評価損益は、プラス89円に減っていた。

主人公は驚いた。増えたり減ったり。こんなに不安定なものなのか。

オフィスで佐藤に相談した。「橋本さんも同じことを言ってました。でも、こんなに毎日変わるのに、本当に待てるんですか?」

佐藤は顔を上げた。「わかってないな。待つんじゃなくて、忘れるんだ。毎日の上下なんて、十年単位で見たら、ノイズみたいなもんだ。お前の人生の中で、今後どうしたいのか。それを決めてあれば、この数円、数百円の揺らぎなんて、取るに足らない」

しかし、主人公は思った。本当に忘れられるのだろうか。この1万円は、自分の給料の一部だ。無視できるはずがない。

その夜、スマホを持つ手が重かった。また口座を開くか、それとも開かないか。その選択が、こんなに大変だとは思わなかった。

画面の向こう側で、148円から89円に減った1万円が、今夜もどこかで動いている。主人公には、それを止めることも、確認することも、完全には諦めることもできなかった。

続きはまもなく

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