まっしろな資産簿

3/3

第3話

第3話 最初の積み立て

ボタンを押してから、画面に『申し込み完了』と表示されるまで、主人公の心臓は高鳴ったままだった。

本当にやってしまった。投資信託を買った。いや、買う予約をした。

夜、家に帰ると、メールボックスに確認メールが届いていた。口座番号、申し込み内容、約款へのリンク。すべてが現実のものになっていた。

明日から、毎月1万円が自動で引き落とされ、バランス型の投資信託に回される。その1万円が何になるのか、誰にもわからない。増えるかもしれないし、減るかもしれない。

でも、と主人公は思った。

通帳に眠ったままのボーナスより、この1万円の方が、何かを生み出そうとしているような気がしたのだ。

翌朝、会社で佐藤に報告した。「やりました。申し込みしました」

佐藤は笑った。「良かったな。でな、ここからが本当の戦いなんだ」

「戦い、ですか?」

「毎日、口座を見たくなるんだよ。増えたか減ったか、気になってな。でも毎日見ちゃダメだ。それが投資で一番難しい。見ないこと。待つこと」

主人公は考えた。完璧な選択をすることより、完璧に待つことの方が、ずっと難しいのかもしれない。

お昼、スマホを握りしめた。もう一度、口座を開いて、自分の投資信託の状況を確認したい。その衝動と戦いながら、主人公は画面を閉じた。

まだ1日目だ。これからが長い。

続きはまもなく

目次

コメント