第4話
声を録る前に
孫娘は僕の言葉を反芻するように、何度も頷いた。スマホの画面を消すと、部屋は暗くなった。窓の外には、夜の街が静かに横たわっている。
「じいちゃん、でもどうやって探すんですか。その『分からなさ』の中の答えって。」
いい質問だと思った。僕自身、明確な答えを持っていなかったから。昔のラジオの時代は、プロデューサーやディレクターが、聴者が何を求めているかを推し測ることが仕事だった。視聴率や投稿ハガキ、電話の声から、世間の『周波数』を読み取る。その積み重ねで番組は作られていた。
でも今、スマホ一台で発信できる時代では、その過程がぐんと短縮されている。いや、むしろ省略されている。だからこそ、多くの人が迷っているのではないか。
「実は、誰かと一緒に始めてみるのが一番だと思う。ひとりで考えてるだけじゃ、自分たちの『声』なんて見えてこない。」
孫娘の目が、少し輝いた。
「じゃあ、始めましょう。じいちゃんと一緒に。」
その言葉を聞いた時、僕の心には妙な緊張が走った。本当に始めるんだ、という実感。昔、放送局で企画会議に出ていた時と同じ、その緊張感。
「分かった。でもね、大事なことがひとつある。」
「何ですか。」
「最初から完璧を目指しちゃいけない。むしろ、試行錯誤のプロセスそのものが、『周波数を探す』ってことなんだ。失敗して、修正して、また試して。その繰り返しの中で、自分たちにしか出せない『声』が見えてくる。」
孫娘は黙って聞いていた。スマホを再び手に取ると、何かを検索し始めた。
「じゃあ、明日から何を話しましょう。」
その質問に、僕は答えることができなかった。なぜなら、それは僕たちが一緒に見つけるべき答えだからだ。
続きはまもなく
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