第3話
耳で考える
えているのかを教えてくれるんだ。つまりね、podcasting って、自分たちが『誰か』になるための道具なんだよ。"
孫娘はしばらく沈黙していた。スマホの光が彼女の顔を照らしている。
「じいちゃん、でもさ。聞くだけじゃなくて、自分たちで『声』を出す側になるってことですか?"
それは、予想外の質問だった。僕は息を止めた。
「そう言ってるのか、君は?"
「だって、じいちゃんが『周波数を探す』って言ったから。自分たちの周波数があるなら、それを誰かに届ける側もいるんじゃないですか?"
彼女の指摘は正しかった。昔のラジオの時代、聴者と発信者は厳密に分かれていた。放送局の人間だけが、周波数を持つ者だった。だが今は違う。スマホ一台で、誰もが放送者になれる時代だ。僕はそのことに、改めて気づかされた感じがした。
「そうだな。君がそう思ったなら、それは間違いじゃない。実は多くの人たちがそう考え始めてるんだ。でもね、ここが難しい。自分たちの『声』って何か、まだ分かってない。何を言うべきなのか、誰に聞いてもらいたいのか、その部分が曖昧なままだと、技術があっても空回りする。"
「なら、探すんですね。何を言うべきなのか、っていう。"
「そう。君さっき、『何が面白いのか分からない』って言ったじゃないか。その分からなさの中に、実は答えが隠れてるんじゃないかな。誰かが用意した『面白さ』じゃなくて、自分たちだけが感じる『何か』を。"
孫娘はスマホを置いた。画面の光が消える。
「でも、見つかるまでどのくらい時間、かかるんですか?"
その質問に、僕は苦笑した。昔のラジオは、放送時間が決まっていた。だから時間配分も、結論も、全部が計算済みだった。
しかし今、彼女たちが探しているのは、そういう『決まった形』じゃない。
「分からないよ。ずっと迷ったままかもしれない。でも、その迷いを声に出すことから始まるんじゃないかな。昔、僕たちが忘れていたことがある。ラジオってのは、本来『対話』の道具だったんだ。"
二人の間に、新しい沈黙が生まれた。やがて彼女が呟いた。
「じゃあ、試しに……声、出してみてもいいですか?"
そのとき初めて、僕は気づいた。
これまで見えていなかった『何か』が、これからここで、形を持ち始めるのだと。
続きはまもなく
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