スリープハック・ダイアリー

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第2話

数字のない朝

スマートウォッチを外した夜は、思ったより不安だった。

寝る前、手首の空白感が気になって何度も触れてしまう。いつもなら就寝時刻をアプリに記録するのに、今夜はそれもない。時計も見ずにベッドに入った。暗闇の中、自分がいま何時なのか、どれくらい眠っているのか、全く分からない感覚。これほど不気味だとは思わなかった。

朝、目が覚めた。窓から差し込む光の加減から、いつもより早いような気がする。スマートウォッチを確認する癖で、とっさに手首を見てしまったが、そこには何もない。あ、そっか。今日は自分で判断する日だ。

体がどう感じるか、注意深く観察してみた。背中は痛くない。頭もすっきりしている。昨夜は何度も目が覚めたような気もするし、ぐっすり寝た気もする。その曖昧さが、これまでの僕には耐えられないものだった。

会社に着くと、同僚が声をかけてきた。「今日、顔色いいね。何かあった?」昨日は指摘されなかったことを、今朝は言われた。スコア58点の夜より、数字のない朝のほうが、外から見たら良く見えるらしい。

昼間、疲れやすさを感じるか意識してみた。いつもと変わらない。むしろ、スコアを気にしていた時より、雑念が少ない気がする。ただし夜が近づくにつれ、新しい不安が生まれた。

今夜も外すべきなのか。それとも戻すべきなのか。デジタルデトックスは成功しているのか、失敗しているのか。判定基準が、今の僕には分からない。数字がないから、進歩も後退も測れないのだ。

その矛盾に気づいた時、僕は笑ってしまった。結局、僕は何かに依存したいんだ。スマートウォッチがなくなれば、今度は『感覚』という新しい指標に支配されはじめている。

翌日、スマートウォッチを手に取った。でも装着する前に、スマートフォンのアプリを削除することに決めた。

続きはまもなく

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