第4話
最初の引き落とし
初めての引き落とし日は、思ったより何事もなく過ぎた。
給与が振り込まれた翌日、口座画面を確認すると、つみたてNISAの投資信託の保有数量が増えていた。3000円分。確認画面には「運用成績 ±0.00%」と表示されている。誰かが自分の代わりに、その金額で何かを買ってくれたのだ。
その晩、給料日の買い物リストを見直してみた。飲みに行ったコンビニでの出費。何気なく買った本。そういった日々の小さな使途と並べると、3000円はそう大きくない。けれど何度も確認してしまうのは、それが「選択」だからかもしれない。食べて消えるのではなく、自分の決断として残っているからかもしれない。
翌週、田中に月初めの口座画面のスクリーンショットを見せた。
「見てください。ちゃんと投資できてます」
「いいじゃん。これから毎月増えていくわけだ」
「でも運用成績はまだゼロですね」
「そりゃそうだ。1ヶ月じゃ何も変わらない。むしろこれからが本当の付き合い方だと思うよ」
田中の言葉を聞きながら、ふと疑問が頭をもたげた。「本当の付き合い方」とは何か。毎月3000円を送り続ける。その先に何があるのか。正直、まだほぼ何も見えていない。
でも、何か始まった。20年という時間の中で、今月は1ヶ月目だ。同僚の勧めを受けて、銀行の窓口で手続きして、月3000円と決めて。
給与明細と投資信託の画面を、また並べて眺めてみた。
続きはまもなく
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