第3話
第3話 はじめの一歩
翌週の金曜日、田中に「つみたてNISA、始めることにした」と報告した。
「え、ほんと?」
「まだ口座開設の途中ですけど。月3000円からにしました」
5000円じゃなく3000円にしたのは、心理的な逃げ道を用意したかったからだ。後から「やっぱりやめます」と言いやすい額。自分のことながら、その考えは少し情けなく思えた。
「3000円でいいんですか?」と銀行の窓口で聞かれた時、「少額だとあまり意味がないのでは」という不安がよぎった。でも担当者は「長く続けることが大事ですから」と言ってくれた。
口座開設の手続きは思ったより複雑だった。本人確認書類、マイナンバー、銀行口座の登録。何度も同じ情報を入力させられた。その手間さえ、この世界への参入障壁に思えた。
初めての引き落としは来月からだ。それまでは、口座画面を眺めるだけ。運用成績はまだゼロ。
夜、給与明細の下に、つみたてNISAの案内パンフレットを並べてみた。月3000円。20年続けたら…計算は複雑で、結局シミュレーション画面を何度も見直した。
ただ一つだけ、確信に近い感覚があった。何もしないでいるよりは、この小さな一歩を踏み出したほうが、20年後は違うんじゃないか。その確信が正しいのか間違いなのか、それはまだ誰にもわからない。
続きはまもなく
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