第7話
面接の朝
朝5時。いつものように目が覚めた。
アラームを止める。カーテンを開ける。ノートを手に取る。その一連の動作は、もう迷いなかった。
「面接の朝。緊張と期待が混ざっている。でも悪くない。昨日の自分、その前の自分、ずっと積み重ねてきたのはこのためだったのかもしれない」
ペンを置いて、ページを閉じた。時間はまだ5時7分。
支度を整えていると、スマートフォンが鳴った。桜子からだ。朝早くのメッセージには、短い言葉だけ書いてあった。「頑張ってね」ではなく、「今のままで」と。
駅に向かう道すがら、いつもと違う景色に気づいた。毎日通っているはずなのに、今日はその道の細部が目に入った。街路樹の緑、人々の表情、朝日の角度。かつての俺なら、寝坊の焦りに支配されて、こんなことに気づく余裕はなかった。
面接会場に到着してから、待合室で待つ間、例の本を開いた。最初のページはまだ折り曲がったままだ。読み込まれていない。だがそれでいいと思えた。完璧な知識ではなく、ここまで来た自分の過程が、俺の一番の資産なのかもしれない。
面接官の前に座った時、一つのことだけ意識した。朝5分のノートを開く時と同じように、今この瞬間を、ありのままに言葉にしようと。
そう決めた途端、不思議と肩から力が抜けた。
帰路、駅の階段を下りながら、俺は気づいた。自分がもう、あの時間の中に帰りたいとは思っていない。朝5分の習慣は、俺を動かし続けるための装置だったのだ。面接がどうなろうと、その後もノートを開く自分がいるはずだった。
家に着いた時、スマートフォンに結果の連絡が入っていた。だが俺が最初に開いたのは、そのメッセージではなく、例のノートだった。
朝5分のページをめくる。明日は、また違う何かが書かれるだろう。
続きはまもなく
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