第2話
狭いコートでの戸惑い
約三十分が経った。相変わらず焦りは収まらず、ボールを蹴るたびに判断が後手に回る。サッカーのように広いスペースを前提にした動きをしていたのだ。フットサルではそれが通じない。パスの精度も悪く、何度も田中に拾ってもらった。
「大丈夫ですよ」田中は何度もそう声をかけてくれた。その優しさが、余計に申し訳なさを呼び起こした。
しかし、ふとしたきっかけで変化が生まれた。左足でボールを受けた瞬間、狭いコート内で即座に判断する必要が生じた。次の瞬間、足が勝手に動いていた。ボールは思った方向へ転がり、田中の足に届いた。成功したわけではなく、あくまで偶然だったが、その時の感覚は新鮮だった。
子どもの頃、学校の校庭で友人たちとボールを蹴った記憶が蘇る。当時は何も考えず、ただ楽しむだけだった。今、それに近い感覚を取り戻しかけているのかもしれない。
「いいですね、その感じです」田中が肯定してくれた。
まだ体は疲れ、息は上がっている。でも何か違う気持ちも芽生えていた。この先、どれほど上達するかは見当もつかない。ただ、もう一度あの感覚を味わいたい。そんな素朴な欲望だけが、心の片隅に残っていた。
続きはまもなく
目次