第1話
第一話 招待状
会社の定例会議が終わり、片付けをしていると営業部の田中が声をかけてきた。「今週金曜日、一緒にフットサルやりませんか?」と。正直、返答に困った。中学校の体育の授業以来、まともにボールを蹴ったことがない。条件反射で断ろうとしたが、彼の誘いは純粋で、最近運動不足だという自分の呟きを覚えていてくれたのだ。結局「考えておきます」と曖昧な返事をした。
その夜、自宅でスマートフォンを開いた。フットサルについて検索してみると、サッカーよりも小さなコートで行うスポーツらしい。プロ選手の動画も出てきたが、その身軽さと連携プレーは別世界のようだった。自分にそんなことができるのか。不安な気持ちと、少しばかりの興味が入り混じっていた。
金曜日の朝、結局参加することを決めていた。仕事を終えた後、初めてフットサルコートを訪れた。屋内の施設で、思ったより狭い。横幅は広くなく、ゴールも小さい。他の利用者たちは慣れた様子で動いている。田中は「まずはウォーミングアップしましょう」と言い、軽いランニングと体操を始めた。
やがてボールが配られた。足に当たる感覚は子どもの頃を思い出させた。ただし、すぐにコートの狭さを実感した。サッカーのような広々とした環境での動きが通用しない。何度も人とぶつかりそうになり、焦った。「もっとリラックスしてください」と田中が笑顔で言ってくれたが、体は余計に力が入ってしまった。
約三十分が経った時、何かが変わった。ボールが自分の足元に転がってきて、無意識のうちに蹴っていた。その先のゴールに吸い込まれるような軌跡。周囲からは歓声が上がり、田中は「いいですね」と親指を立てた。その瞬間、久しぶりに体を動かす喜びを感じた。始まりはこんなものなのかもしれない。
続きはまもなく
目次