第5話
第5話 「比較」という名の岐路
感覚に向き合い始めて二週間目。私は思いもよらない現象に直面していました。
「今日、どう感じたか」を書き付ける習慣がついたある日、SNSでスケッチ仲間の作品を見かけました。三ヶ月目とは思えない完成度。コメント欄には称賛が溢れている。その瞬間、私の心に冷たいものが落ちてきた感覚を覚えました。
昨日の自分は「線が柔らかかった」と書き付けた。今日はどうか。同じように描いても、その作品との距離感が、急に近い存在に感じられてしまったのです。
田中さんに会った時、思わずそのことを口にしました。すると彼女は静かに笑って、こう言ったのです。「そこからが本当の始まりですよ」と。
三ヶ月目の罠が、実は二つあるのだと、その時初めて理解した気がします。一つ目は、自分との比較。二つ目は、他者との比較。
前者は内省で対処できるかもしれない。でも後者はどうか。続けることで、否応なく「評価」というものの重さを感じ始める。自分が作っているもの、自分が重ねているものが、目に見える形で他者と並べられるようになる。
それでも続ける人と、そこでやめてしまう人がいるのだと思いました。
その夜、「今日、どう感じたか」に加えて、もう一行付け足すことにしました。「それでも、また明日も描くか」と自分に問いかける。その答えが、本当の理由になるまで。
続きはまもなく
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