画面の向こうの距離感

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第6話

返信の重さ

新しい関係が生まれるのか、それとも既に存在する何かが形を持つだけなのか。その区別は、主人公にとって重要だった。

スマホの画面は相変わらず、未読のメッセージを表示したままだ。時間は深夜に差し掛かっていた。推し活のコミュニティでは、こんな時間帯でも他の誰かが同じように画面を見つめているはずだ。配信ライブの感想を書き続けたり、推しのニュースを掘り下げたり、あるいは誰かとメッセージを交わしたり。デジタルの空間では、時間帯は関係がない。

友人の言葉が再び浮かぶ。「本当には知らない」。その指摘は、実は双方向だ。相手も自分のことを、SNSに投稿された側面からしか知らないはずだ。プロフィール、投稿された推し活への熱量、時々映り込む日常。それらが全てではなく、選別された情報に過ぎないことは、互いに了解しているのではないか。

だとするなら、その了解の上で関係を始めることの意味は何か。主人公は、もう一度メッセージを読み返した。相手の言葉は丁寧で、押し付けがましくない。次の配信ライブを見ることは、既に主人公が決めたことだ。ただ、それを一人で見るのか、誰かと共に見るのか。その選択が、今ここにある。

キーボードに指を置いた。返信することで、何かが確定する。だが同時に、何かが始まるのでもあるだろう。画面の向こうの距離感は、返信を送ることでも変わらないかもしれない。むしろ、メッセージのやり取りを重ねた先にも、その曖昧さは残り続けるのではないか。

そう思い至ると、手から力が抜けた。主人公は、ゆっくりと返信を打ち始めた。

続きはまもなく

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