毎日の小さな工夫

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第8話

枠と自由のあいだで

ろうとするのではなく、「続ける自分」になること。その差は、思いのほか大きい。

三ヶ月が経った。曜日ごとのテーマは今も変わらない。ただ、月曜の作り置きの内容は、気分や季節で変わるようになった。水曜の新しいレシピも、失敗することがある。それでも続いているのは、成功と失敗が同じ枠組みの中に収まるからだ。

先週、新しいレシピが大失敗に終わった。味付けを誤り、かなり塩辛くなってしまったのだ。かつての私なら、そこで心が折れていたかもしれない。「自炊なんて向いていない」と、簡単に諦めていたはずだ。

だが今の私は、違う反応をした。

「水曜だから、新しいレシピに挑戦する日。失敗も含めて、そういう日なんだ」

その塩辛い料理は、金曜の「使い切る日」で別のアレンジを加えられた。完璧ではないけれど、食べられるものに変わった。その過程さえも、習慣の一部になっていた。

気づけば、調理そのものへの見方が変わっていた。毎日を完璧にこなす競技ではなく、週ごとのリズムの中で、自分のペースを探る営みになったのだ。疲れた日は手を抜く。気力がある日は少し工夫する。そうした緩急が、全体として「続く」という形をとっている。

習慣化の話に戻すなら、おそらく重要なのは「堅牢さ」ではなく「柔軟性」なのだ。完璧な計画では、現実の揺らぎに耐えられない。けれど、ゆるく定まった枠なら、そこにしなやかに合わせることができる。

キッチンに立つことが、もう苦ではない。むしろ、その時間が自分の一部になった感覚すら覚える。

「毎日の工夫」は、結局のところ、毎日を自分のものにしていくプロセスなのだろう。完成をめざすのではなく、繰り返しの中で、少しずつ自分のリズムを取り戻していく。その地味で、しかし確かな営みこそが、習慣を生きたものにするのだ。

明日は月曜。また作り置きをしようと思う。何をつくるか、まだ決めていない。それでいい。決まった枠の中で、その時の私が選ぶものを信じることにした。

(完)

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