第5話
観察される側、選ぶ側
「俺たちが自分で気づいて、自分たちで変えたわけじゃなくて、AIに指摘されて従ってるだけなんですかね」
高橋の言葉は途中で止まった。島田はそれ以上を促さず、静かに待った。
「でも部長、実際には…」高橋は言い直した。「提案をもらっても、それをどう使うかは俺たちで決めてるんです。ダメだと思ったら無視することもあります」
島田は眉をひそめた。「無視することもある?」
「はい。最初、AIが営業資料の保存方法を変えろって言ってきたんですけど、その方法だと俺たちの慣れた流れと合わなくて。だから別の形にアレンジして、AIにも『こういう理由でこうしました』って報告したんです」
話を聞いていた鈴木も頷いた。「その後、AIの提案がそれに合わせて変わりました。押しつけじゃなくて、何か…対話してる感じです」
島田は目を閉じた。データだけを見れば、効率化という一方的な改善に映る。しかし現場はそうではなかったのか。あるいは、その違いを見分けるには、ログとは別の何かが必要なのか。
「分かった。その調子でいい。ただし」島田は顔を上げた。「お前たちが『なぜそうするのか』を言葉にしておくこと。AIへの報告もそうだが、特にチーム内で。なぜなら、それがお前たちの『判断』だから」
高橋たちは顔を見合わせた。改善の正体は、まだ見えていない。だが今、その輪郭が揺らぎ始めていた。
続きはまもなく
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