第5話
第5話 評価の言葉
面談室は想像より明るかった。窓からの光が、机の上の書類を照らしている。評価者の顔は見慣れたものだが、この部屋に入ると表情が変わるのを何度も見てきた。
「では、今年度の成果についてお聞かせください」
私は、用意した言葉を口にした。データ、成果、貢献度。すべて正確だ。だが、その瞬間、屋上での佐藤の言葉が蘇った。これが翻訳なのだ。
評価者がペンを走らせている。私の言葉が、評価シートの欄に落とし込まれていく。そこで初めて気づく。二重性は、私たちの側だけにあるのではない。制度の側にも、それはあるのではないか。
「ご質問があれば」と評価者が言った。
その瞬間、私は田中の硬い表情を思い出した。彼は何か言うのだろうか。それとも、沈黙を選ぶのか。
部屋を出ると、廊下で田中とぶつかった。彼の目は、何かを決した人間のそれではなく、むしろ問いの途中にある人間のそれに見えた。
「どうだった」と彼が聞く。
私は答える代わりに、別の問いを返した。
「翻訳だけでは足りないと思いませんか」
田中は、少し考えてから、廊下の奥を見つめた。金曜日の午後は、まだ終わっていない。
続きはまもなく
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