第5話
手放すことの意味
翌日の仕事帰り、古本買取の店に立ち寄った。店員は段ボール箱の中身を丁寧に確認していく。「いい本がそろっていますね」と呟いた。査定額を聞くと、思っていたより少ない金額だった。でも、それは予想の範囲内だった。金額のためではなく、本たちが誰かの手に渡ることが目的だったから。
受け取った明細書を眺めながら帰路につく。部屋に戻ると、本棚は確かに空いていた。でも、スッキリとした感覚と同時に、別の違和感も生まれていた。
あれから一週間。仕事も生活も変わったことはない。なのに、何かが変わったような、変わっていないような、その中途半端な感覚が続いていた。
ある晩、リビングのソファに座って周囲を見渡す。セーターを手放した時は、はっきりと「楽になった」と感じた。だが本の場合は違う。失った空間よりも、失ったものについて考える時間の方が多かった。
同期の言葉が再び浮かぶ。「減らすのは楽だけど、手放すのは別」。
これが、その先なのだろうか。単に物を減らすだけでなく、手放したその先に、また別の問題が待っているのかもしれない。そしてそれは、物を減らすことよりもずっと、複雑で時間がかかるプロセスなのだ。
明日の朝、改めて部屋全体を見ることにしよう。何が本当に必要で、何が次に手放す対象か。その判断をするまでの思考そのものが、自分を変えるのだと気づき始めていた。
続きはまもなく
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