第4話
選ぶことの重さ
出勤前、その本棚を眺めた。選ぶことの楽さが、ここにもある。でも、別の問題が浮かんでいた。
手放した本たちをどうするか。段ボール箱に詰めたまま、玄関に積み上がっている。売るか、寄付するか、可燃ゴミに出すか。判断が止まっていた。
セーターの時は違った。減らすまでが目的で、その後のことは深く考えていなかった。だが本は違う。一冊一冊に、過去の自分がいる。買った理由、読もうと思った理由。それらを手放すことは、単なる処分ではなく、何かを決別することに感じられた。
会社に着いても、その箱のことが頭から離れない。デスクで書類を整理しながらも。昼休みに同期と食事に行った時も。
「物を減らすのって、疲れません?」と、ふと呟いていた。
同期は、スマートフォンの画面を見ながら答えた。「減らすのは楽だけど、手放すのは別だと思う。」
その一言で、モヤモヤしていた感情がはっきりした。私は、本を手放そうとしていたのではなく、その本たちが象徴していた「過去の自分」を手放そうとしていたのかもしれない。
帰宅してから、箱をもう一度開けた。何冊か手に取り直してみる。やはり、読み返そうとは思わない。でも、その本たちがあった時間は確かにあった。自分を形作った一部だ。
ならば、ただ捨てるのではなく、次の誰かのもとへ。そう決めた瞬間、箱の重さが少し変わった気がした。
翌日の仕事帰り、古本買取の店に立ち寄った。店員が箱を受け取り、査定を始める。その間、私は棚を眺めていた。セーターも、本も。減らした後に残ったものたちだ。
それらが、これからどう変わっていくのか。それも、まだ見えていない。
続きはまもなく
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