軌道上の手紙

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第6話

軌道上の手紙 第6話 信号の層

座標の一致は、単なる偶然では収まらない重さを持っていた。佐藤は画面を分割し、四十六時間前のログと現在のデータを並べた。二つの情報は、時間を隔てて同じ地点を指し続けている。

「自動補正」という名目で記録された位置変更。その直後から始まる規則正しいデータ送信。そして火星表面のその座標は、探査機の着陸予定地からわずか三キロメートルの距離にあった。

管制室の静寂が、急に重く感じられた。他の管制官たちはまだ彼の画面を見ていない。交代時間までの時間差が、彼に一人で判断する余白をくれていた。

キーボードを叩く指が止まった。報告をするなら、今だ。だが、何を報告するのか。謎の座標?計測誤差の再浮上?それとも、機体の自動補正そのものが異常だということか。

次のアラームが鳴るまでに、彼は決断しなければならない。

佐藤は別ウィンドウを開いた。火星探査機に搭載された全センサーの履歴を呼び出す。熱感知、分光分析、磁場測定。四十六時間前のその瞬間、どのセンサーが反応していたのか。

データが展開される。その中で、一つのセンサーだけが異常な値を記録していた。それは外部からのエネルギー検出装置。通常は背景ノイズのみのはずが、その時刻に明確なピークを示していた。

「何かが、あそこにいた」

呟きは、佐藤自身の思考の外へ漏れた。

画面に映る数値たちが、急に別の意味を帯び始める。この信号は、単なるノイズではなく。火星探査機が、意図的に何かを検知し、それに応答していたのではないか。

アラームまで、残り23分。

続きはまもなく

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