第5話
第5話 足跡の解読
佐藤は椅子から立ち上がった。管制室の蛍光灯が、彼の影を床に落とす。53分。その時間が、判断の猶予なのか、それとも逃避なのか、彼自身にも区別がついていなかった。
低周波パターンの画面に戻る。時間の足跡。過去から現在へと続くそれは、単なるタイムスタンプではなく、何かの意図を持っていた。四十六時間前から始まる間隔。なぜその時点からなのか。
佐藤は火星探査機のミッション日誌を引き出した。四十六時間前――それは機体が予定外の位置変更を行った直後だ。システムログには「自動補正」と記録されている。だが、その補正は当初の計画にはなかった。
次のアラームが鳴った。22時34分。
データは前のものより、さらに鮮明だった。そしてその中に、彼が見逃していた層が浮かび上がった。数値の羅列ではなく、それが示す座標。火星探査機の現在地ではなく、別の地点を指していた。
「これは……」
呟きの途中で、佐藤は気づいた。その座標は、火星探査機が四十六時間前に感知した、謎の電磁波の発生源とほぼ一致していた。当時それは、計測誤差と判断されて報告書に埋もれていた。
彼の手は再びキーボードに走った。その座標から逆算する。信号がどこから来ているのか。誰が送っているのか。
交代までの時間は46分。アラームは規則正しく、呼吸するように鳴り続けていた。
続きはまもなく
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