第5話
第5話 朝の習慣
翌朝、いつもより早くオフィスに到着した。田中さんとの約束を思い出し、自分もまた新しい日常へ一歩を踏み出そうとしていることに気づく。
「おはようございます」
田中さんは既に待っていた。彼女の横顔には、昨日の昼休みとは違う、清々しさが宿っていた。
「では、始めましょうか」
彼女が示したのは、メモに書かれていた体操の手順だった。ただし、昨日一人で試した時とは異なり、同じリズムで体を動かす相手がいるという事実が、単なる運動を何か別のものに変えていた。
首をゆっくり回す。肩を上げ下げする。腕を大きく回す。どれも日常の中で無視してきた動きばかりだ。だが、その一つ一つが、自分と自分の体を繋ぎ直す時間に思えた。
「毎朝これを続けると、一日の始まりが違うんです」
田中さんの声には確信があった。数週間の実践が、単なる痛み対策ではなく、自分の時間の使い方や感覚まで変えたのだろう。
体操を終えた時、オフィスはまだ静寂に包まれていた。朝日が窓から差し込む中で、二人は机に向かった。
午前中、不思議と集中力が続いた。肩の違和感はあるが、それは痛みではなく、自分が今、ここにいるという感覚に変わっていた。
昼休み前、デスクの端に置かれたメモを見つめる。最初は誰が落としたのか、何の意図で書かれたのかすら不明だった。だが今、それは確かな物語を持ち始めていた。
明日も朝に田中さんと会う約束は、既に口頭ではなく、二人の中で当たり前のものになりつつあった。変化は思っていたより静かに、けれど確実に、日常を塗り替えていく。
メモの最後には、まだ読んでいない文字が残されている。
続きはまもなく
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