第8話
自分のペースで、歩む
翌日の帰宅後、私は机の上に給料明細と家計簿を並べた。
貯金、投資信託、食費、趣味費。列挙してみると、それぞれが自分の人生の一部を占めていることが見える。でも、今まではそれを『当たり前』として受け入れていただけだった。
先輩の言葉を思い出す。「ルール作り」。
他人が「月給の3割は貯金すべき」と言っても、「投資信託は長期運用が基本」と言っても、それは所詮、誰かの正解に過ぎない。大事なのは、自分がなぜそれを選ぶのか、その理由を持つことだ。
私は手を動かし始めた。月給を配分するにあたって、一つひとつに対して問い直す。投資信託に五万円入金するのは、将来への不安からか。それとも、今を楽しむための余裕を作りたいからか。その答えが変われば、配分だって変わるかもしれない。
完璧な配分を目指すのではなく、「今の自分たちに必要な形」を探る。失敗もあるだろう。計画を修正することもあるだろう。でも、その試行錯誤こそが、給料という数字を『自分の人生』に変える営みなのだと感じた。
紙に書き出した数字を見つめながら、小さく笑みがこぼれた。
新社会人として受け取った初めての給料。その使い道を考え続けた日々は、単なる家計管理の話ではなく、自分がどう生きたいのかを問い直す過程だったのだ。
明日からも、月給は振り込まれ続ける。その度に、自分のペースで、丁寧に考え直す。そうして少しずつ、自分の人生を形作っていく。
それが、私の答えだ。
(完)
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