副業エンジニアの試行錯誤

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第5話

選択の重さと、その先

返信を送る前に、一度立ち上がることにした。

夜中の自分の部屋。デスクライトだけが照らす空間で、キーボードの前に座り続けるのは、判断を遅延させているだけではないか。そう気づいた。

冷蔵庫から水を取り、窓を開けた。夜風が頬を撫でる。明日も朝六時には起きなければならない。本業の打ち合わせがある。その後、夜はまたこのツールに向き合う。そのサイクルが、もう三ヶ月続いている。

「法人利用してもいいですか」

その問い合わせの相手を、自分は調べていなかった。どんな企業なのか。何人で使うのか。どの程度の規模なのか。すべてが不明だ。有料化を前に、そうした情報すら持たずに判断しようとしていた自分に気づく。

スマートフォンに戻り、メールを開いた。署名欄を見ると、会社名と部署が記されていた。ウェブで調べてみる。従業員数は二十名前後。業種は業務効率化ツールの提供企業。皮肉にも、自分と似た立場の企業だ。

「このツール、どうやって知ったのですか」という逆質問を、丁寧に返すことにした。

ユーザーの「用途」を理解することなく、収益化の構造だけを先に用意するのは、自分の開発哲学に反していた気がする。法人利用を許可するかどうかは、相手を知ることからしか始まらない。既存ユーザーとの関係も、新しい利用者も、すべては透明性の上にしか成り立たないはずだ。

返信を送った。その晩、自分は初めて、ツールの使用規約に向き合うことにした。曖昧だった記述。想定していなかった利用シーン。一つひとつを、丹念に見直す。

ユーザーの返信が来たのは、二日後だった。

続きはまもなく

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