第5話
第5話 「先人の言葉」
朝5時。田中は、いつもより10分早く目を覚ました。
スマホを手にして、問灯の検索欄に打ち込んだのは「副業 実際のところ」。昨日のコメント欄の一文——「先人の生の感想」——が引っかかっていたのだ。
画面に現れたのは、具体的な職種ごとの質問と回答の数々だった。プログラミング、ライティング、翻訳、データ入力。それぞれに「やってみて」という声があり、「やめた理由」という声もあった。
重要だったのは、成功者の話ではなく、途中で挫折した人の言葉だった。「思ったより時間がかかった」「単価が安すぎて続かない」「最初の三ヶ月は本当に稼げない」。
これらのコメントに返信している人もいた。「自分はそこを工夫して乗り越えた」という者もいれば、「その人の言う通り、向き不向きがある」という者もいた。
田中は気付いた。佐藤のアドバイスの意味が、ようやく腑に落ちた気がした。「試す」とは、無謀に飛び込むことではなく、先人の失敗地点を地図として、自分ならどう歩むか考えることなのだ。
ベッドから起き上がり、カーテンを開ける。まだ暗い朝5時の街が見える。
田中は新しいメモ帳を開いた。「試してみたい副業」の欄に、三つの職種を書き出した。それぞれについて、問灯で読んだ「失敗した人の理由」と「工夫した人の工夫」を箇条書きにしていく。
時間は5時15分。会社に出勤するまで、あと3時間。
昨日までのモヤモヤは消えていなかった。だが、向かう方向が、ようやく見えた気がした。
続きはまもなく
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