投資信託という名の扉

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第8話

「問い続ける」ということ

アプリを閉じた時、ふと思った。この「問い続ける」という過程こそが、銀行員が指摘した「自分自身の中にある」ものなのではないか。

翌週、銀行の窓口で面談の予約を入れた。運用成績の相談ではなく、漠然とした質問をするためだ。銀行員は、いつもの営業トークではなく、静かに耳を傾けた。

「投資信託を続ける理由が、利益のためじゃなくなった気がします。ニュースを見る時も、企業の決算を見る時も、それが自分の口座とどう繋がっているか、無意識に考えるようになって。でも、それが正解なのか、最適な選択なのか。未だにわかりません」

銀行員は頷いた。「つまり、あなたは自分が何を求めているのかを、投資信託という経験を通じて問い直しているんですね。多くの方は、結果としての数字だけを見がちです。ですが、資産形成というのは、実はそこから始まるんです」

その言葉がしっくり来た。完全な納得ではなく、むしろ新しい問いへの入口だった。

帰路の電車で、アプリを開いた。基準価額は前月比で小幅な上昇。以前なら一喜一憂しただろう。だが今は違った。その数字の背後にある、世界のどこかでの選択や行動、市場参加者の心理。そして自分が、その一部であるという感覚。

投資信託という名の扉は、まだ完全には開ききっていない。だからこそ、毎月の積立は続く。毎日のアプリチェックも続く。不確実性の中で、自分がどう向き合うかを学ぶため。その過程こそが、本当の資産形成なのだと、ようやく理解し始めていた。

数字は変わり続ける。ニュースは毎日更新される。その中で「問い続ける」。その営みは、終わりのない旅のようだった。だが、その旅こそが、自分を大きくしていくのだと感じた。

(完)

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