投資信託という名の扉

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第7話

市場の音を聴く

スマートフォンのアプリを開く習慣は、いつの間にか日課になっていた。朝の支度中、昼休み、帰路の電車の中。その都度、口座の残高と基準価額を確認する。だが最近、その行為の意味が変わり始めていた。

数字を見ているのではなく、その背後にある「何か」を感じようとしている自分に気づいた。世界経済の営みという言葉は、抽象的すぎて実感がない。だが、毎日更新される基準価額は、地球のどこかで起きている出来事の痕跡ではないか。

ニュースアプリで目にする企業決算、新興国の政策変更、自然災害のニュース。こうしたできごとが、投資信託の中身に組み込まれている企業群に波紋を広げていく。自分が預けた資金は、その波の中を漂っているのだ。

同僚との会話が蘇った。「続けていますか」と聞かれた時、自分は理由を言葉にできなかった。だが今なら少し違う答え方ができるかもしれない。利益を期待しているわけでもなく、不安を消すためだけでもない。むしろ、世界の経済活動とそこに含まれた人間の営みと、自分がどう関係しているのかを問い続けるための装置。それが投資信託という選択肢なのではないか。

ただし、その答えもまだ暫定的だった。市場の変動に一喜一憂する気持ちは相変わらずだ。本当の理由を知るまでには、もっと時間が必要なのだろう。アプリを閉じた時、ふと思った。この「問い続ける」という過程こそが、銀行員が指摘した「自分自身の中にある」ものなのではないだろうか。

続きはまもなく

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