第6話
長期の物語を読む
銀行員の言葉は、その後も何度も頭をよぎった。
「投資信託の中にはなく、あなた自身の中にある」——その問いかけは、単なる励ましではなく、より厳しい現実を突きつけていた。毎月の積み立てを続けるのは、口座の数字が増えるからではない。では、何のためなのか。
職場の同僚との何気ない会話がきっかけだった。給与が上がらない時代、誰もが「このままでいいのか」と考えている。その中で、投資信託の話を持ちかけてくる人もいれば、完全に興味を示さない人もいた。
「続けていますか」と同僚に聞かれて、自分は頷いた。だが理由を聞かれると言葉に詰まった。利益を期待しているのか。将来への不安を和らげたいのか。それとも、何か行動していることそのものに安心を求めているのか。
夜、部屋で過去10年の推移グラフを自分でも見直してみた。銀行員が指摘した通り、短期では上下の繰り返しだ。だが、その上下の中に、自分の積み立てる金額の総和も含まれている。買値も売値も、同じ市場の中で決まっている。
そこで気づいたのは、数字の増減以前の問題だった。5年単位で緩やかに上昇している背景には、世界経済の営みがある。その営みの一部に、自分の月々の判断が組み込まれている。投資信託という仕組みを通じて、自分は世界とつながっているのだ。
もっとも、それが果たして「自分自身の中にある理由」なのか、まだ確信は持てなかった。スマートフォンのアプリを開く時間は相変わらず多い。ただ、その時に感じる感覚が、少しずつ変わり始めていた。短期の変動に心が揺さぶられるのではなく、その背後にある自分の選択を問い直す感覚に。
来月も、月々の積み立ては続く。その時、自分は何を見つめているのか——その問いだけは、今のところ、まだ途中のままだった。
続きはまもなく
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