第8話
第8話 続くこと、つながること
「毎朝こうしていると、何が必要で、何が不要かが、わかるようになる」
田中の言葉は、そこで途切れた。でも、自分には続きが聞こえた気がした。
朝焼けはやがて朝日に変わり、公園の緑が鮮やかに浮かび上がった。ランニングをしている人、散歩をしている人、ただ座って空を見ている人。いろいろな朝活がそこにはあった。
「SNSで見た頃は、朝活って特別なものだと思ってた」自分は言った。「効率的で、充実していて、自分を変えるもの。そういうイメージだった」
「今は?」田中が聞いた。
「今は、単純なことなんだと思う。毎日繰り返すことの中に、何かが積み重なっていくのかな。写真には写らない部分で」
あの寝坊していた頃の自分は、朝という時間を失っていたのだと気づいた。目覚まし時計を止めて、布団の中で、スマートフォンの画面を見ていた。他人の朝活の写真を。他人の完成された朝を。
でも、自分の朝は、自分の中にしかない。田中と並んで座って、何もしないで空を見つめる時間も。会社に向かう駅の階段も。デスクで初めてのコップのコーヒーも。
五時のアラームは相変わらず鳴る。今もこれからも、多分ずっと。だが、その音に従う自分は、もう以前ではない。
「明日も来ますか?」田中が立ち上がりながら聞いた。
「ああ」自分は答えた。
二人は公園を後にした。朝日が街全体を照らし始めていた。通勤ラッシュがまもなく始まる。いつもと変わらない朝だ。だが、自分はもう、それを退屈だとは思わなかった。
続くことの中に、何かがある。そう確信するまでに、自分は何日続けたのだろう。もう数えてはいない。数える必要もない。
明日も五時に起きよう。その先に何があるのか、まだ知らない。だから、続ける。
(完)
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