余白を選ぶ

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第2話

選別の時間

箱の中身を改めて眺めると、自分がどれだけ『いつか』に頼ってきたのかが見える気がした。

シャツを一枚、手に取る。素材は悪くない。色も無難だ。でも袖を通さない理由を考えると、答えはシンプルだった。似合わないわけじゃなく、心が反応していないのだ。

迷わずに別の箱へ。それが、新しい部屋へ行かない方の箱だ。

本も同じ要領で選り分けていく。背表紙を見て、心に小さな『欲しい』が灯るかどうか。その感覚だけを頼りにした。読み終わった本、途中で止まった本、買ったことすら忘れていた本。それらを手放すたびに、何かが軽くなっていく感覚がある。

午後3時を過ぎた。部屋は段ボール箱で相変わらず埋もれているが、様子が変わっていた。持ち込む箱の数が目に見えて減ったのだ。

スマートフォンを手に取り、新しい部屋の写真を見返す。窓から光が入る居間。キッチンの狭さ。寝室の奥行き。それぞれに、何を置くかが少しずつ見えてくる。

こんなに丁寧に自分の持ちものと向き合ったのは、いつ以来だろう。

ふと、別の疑問が頭をもたげた。なぜ、今まで選別しなかったのか。捨てることが、何か後ろめたいことのように感じていたのか。それとも、選ぶこと自体が面倒だったのか。

床に座ったまま、新しい部屋への転居予定日を数える。あと三日だ。この時間の中で、本当に必要な判断ができるのか。少しの不安と、不思議な期待感が同居していた。

続きはまもなく

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