第8話
第8話 続ける理由は、続けた先にある
「昨日、レシピなしで作ってみた。完璧じゃないけど、何か新しい味がした。」
母への返信を送ると、すぐに返事が来た。短いメッセージだったけれど、その一言に僕は驚いた。
「それでいいんだよ。」
何か、ずっと待ってくれていたような感じがした。
考えてみれば、母が料理を続けてきたのも、完璧さのためじゃなかったんだろう。毎日、試行錯誤しながら、その日その日で選択して、何かを作り続けていたのだ。失敗もあっただろう。でも、その積み重ねが、僕の「続ける」という感覚の土台になっていたのかもしれない。
続ける理由を探して、僕は完璧さを手放すことの大切さに気づいた。でも、その先にあるのは、理由そのものの変化だったんだと思う。
最初は「自分で作らなきゃ」という義務感があった。その次に「完璧に作ろう」という目標があった。そして今、あるのは「明日も、何か作ってみようかな」という、ただの興味だけだ。
続く理由なんて、その瞬間瞬間で変わってもいいのかもしれない。大事なのは、続けることそのものの中で、新しい理由を見つけ続けることなんじゃないか。
冷蔵庫を開けると、今日も何か余った食材が目に入った。完璧じゃなくていい。試行錯誤の中で、何か生まれるかもしれない。その小さな可能性が、続ける力になっていくんだと、ようやく分かった気がした。
明日も、何を作ろうか。そう考えるだけで、朝日の中に笑みがこぼれた。
(完)
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