締切の向こう側

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第2話

締切の正体

メールを読み返した。修正内容は思ったより軽微だった。色の濃淡、フォントサイズ、あと余白。要するに、焦りながら作った雑さがそのまま指摘されている。

普通なら「了解です、直します」と返信して、また徹夜コースだ。でも今日は違う気がした。修正を始める前に、クライアントに電話してみようと思い立った。

「実は、この案件の目的を、もう一度確認させてもらってもいいですか」

クライアント側も驚いたのか、一瞬間があった。でも、その後の説明は前のメールやりとりより、ずっと丁寧だった。その商品が誰に届くのか、どんな気持ちになってほしいのか。それまで自分は、そういう話を後付けで理解していたのだと気づいた。

電話を切ったあと、ペンを手に取った。修正内容のリストを見る。でも今、それらが単なる「直し」ではなく、目的への道筋に見えた。色が濃くなるのは、視線をどこに集めるか。余白が増えるのは、情報の重さを調整するためだ。

そのとき、ふと思った。締切に追われているあいだ、自分は何も見ていなかったのだ。クライアントも、ユーザーも、そして自分が作ろうとしていたものも。

締切って、本当は目的地への距離を示す標識なんじゃないか。それをペースメーカーだと勘違いして、ゴールを見失ってた。

修正作業は予定より早く終わった。昨晩の疲れなんて感じなかった。

続きはまもなく

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