第2話
本との再会
翌朝、田中は駅前の書店に立ち寄った。昨日の電車の中で見かけた本のことが、朝まで頭から離れなかったのだ。
書店の店員に尋ねると、ものを減らすことに関する本は何冊かあるという。その中から、女性が手にしていたであろう一冊を選び、手に取った。帯には「シンプルに生きることで、本当に大切なものが見える」と書かれていた。
昼休みに会社の休憩室で、田中はその本を開いた。著者は、かつて自分も買ったままの商品や、いつか使うかもしれない物で部屋を埋め尽くしていたという。その状態から抜け出すきっかけは、ある日突然訪れたわけではなく、小さな疑問の積み重ねだったと書かれていた。
読み進むにつれ、田中は自分とどこか似ていることに気づいた。ただ、著者が異なっていたのは、その疑問に向き合う決心をしたことだ。まずは、本当に必要なものとそうでないものを見分けることから始めたという。
ページをめくる手が止まらなくなった。仕事の資料や報告書を読むときとは異なる、何かが胸に引っかかるような感覚。退勤後、田中は再び自分の部屋を見つめることにした。
クローゼットを開ける。その中には、数年前に買ったまま着ていない服が何枚もある。本当に、いつか着るのだろうか。デスクの引き出しも見直してみる。3年前の手帳は、本当に必要だろうか。
田中の中で、小さな確認作業が始まったばかりだった。
続きはまもなく
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