余白の時間

1/1

1

第一話 朝の駅で

田中が通勤ラッシュに揺られていたとき、隣に立つ女性が手にしていた本のタイトルが目に入った。その瞬間、自分のカバンの重さを意識した。

オフィスに着くと、デスクの引き出しを開ける。文具、配られた書類、いつ使ったか不明な手帳。気づけば、3年前の手帳まで入っていた。なぜ捨てないのか。自分でも理由が思い当たらない。

昼休みにコンビニに寄ると、セール品を手に取った。使うかもしれない、いつか必要になるかもしれない。そういう理由で、新しいものが鞄に加わった。

その夜、帰宅後にふと部屋を見回る。買ったまま開けていない箱が三つ。読み終わった本が山のように積まれている。クローゼットは服で溢れている。

電車の中で見かけた本のことをもう一度思い出した。本当に減らすと、何か変わるのだろうか。そんな素朴な疑問が、田中の中にそっと芽生えた。明日、その本を探してみようと思った。

続きはまもなく

目次

コメント