第1話
第一話 提案資料の作成時間
月曜の朝、田中は期限が迫った提案資料を前に頭を抱えていた。クライアントの要件をまとめ、それに合わせた構成案を考える。通常なら丸一日かかる作業だ。
同僚の小松が、ChatGPTを使い始めたらしいという話を思い出した。ほぼ手ぐらいのつもりで、要件をプロンプトに入力してみた。提案の流れ、セクション構成、それぞれの要点。生成された文章を見て、田中は驚いた。悪くない。むしろ、自分が思いついていなかった視点もいくつかある。
三時間で資料の下書きが完成した。いつもなら六時間以上かかっている。
「こんなに早くいいのか」
そんな疑問がよぎったが、クライアント要件とのズレを確認し、数字を入れ直して、独自の分析を足す。完成した資料を眺めると、十分なクオリティだった。
午後、小松に話しかけてみた。
「AIの提案とか、本当に大丈夫なのかな。ちょっと怖くない?」
小松は肩をすくめた。
「最初はそう思ったけど、考え方が変わった。AIは下準備。最後は自分の判断と経験が生きてくる。ゼロから一を作る時間を減らせるってだけ。むしろ、本当に大事な部分に時間を使えるようになった」
田中は自分の資料をもう一度見返した。確かに、AIが作ったテンプレートの上に、自分の経験とクライアントへの理解が乗っかっている。完全に自分の成果とは言えないが、ただのツール使いでもない。その曖昧さがどうにも落ち着かなかった。
金曜日、クライアントの反応は上々だった。提案が通ったのである。
成功体験は、疑問も同時に大きくした。これからどうやってAIと付き合っていくのか。その答えは、まだ見えていない。
続きはまもなく
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