第3話
二日目の違和感
二日目の夜は、思ったより早くやってきた。
仕事中、デスクの片隅で何度もスマートフォンに手が伸びかけた。いつもの癖だ。昼休みにSNSを確認し、帰路の電車内でニュースアプリをスクロールし、駅のホームでメッセージをチェックする。その反復運動が、一日の一部になっている。
昨夜の「成功」が、逆に今日の欲求を強めているのかもしれない。禁止されたものへの執着は、こういうものなのだろうか。
帰宅後、昨夜と同じルーティンを始めた。スマートフォンをリビングに置き、ベッドルームへ。だが今夜は違う違和感が生じた。本を手にしても、昨夜ほど集中できない。文字が頭に入らない。むしろ、置き去ったスマートフォンの存在が、別の形で気になり始めた。
重要な連絡が来ていないか。仕事のメッセージは。SNSの通知は。
理屈では、そうした心配は不要だと分かっている。朝まで確認できなくても、実害はない。それでも、脳はざわついている。スマートフォンなしの夜が、昨夜の「静寂」ではなく、今夜は「空白」に感じられた。
コンサルタントの言葉を思い出す。「変化には波がある」と彼女は言っていた。初日の達成感の後に来るのは、往々にして反発だと。それは脳が、奪われた刺激を取り戻そうとする抵抗なのだという。
本のページをめくり続けた。内容は相変わらず頭に入らない。だが、ここで諦めてリビングに戻れば、昨夜の小さな成功は帳消しになる。そう考えると、ただ時間が過ぎるのを待つことさえ、一種の実行になっているのだと気づいた。
夜中に一度、目が覚めた。いつもの中途覚醒の時間帯だ。ここで習慣が顔を出す。スマートフォンを確認したくなる衝動。だが、それもまた、乗り越えるべき波のひとつなのだろう。
天井を見つめ、ゆっくり呼吸をする。この瞬間も、記録の一部だ。コンサルタントに報告する材料になる。
朝が来た。二日連続での朝までの到達は、確かだった。
続きはまもなく
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