第8話
第8話 朝までの地図
しかし、記録が増えていけば、もしかすると何かが見えてくるのではないか。そう思い始めていた。
2週間目。手帳のページが埋まり始めた。
時間帯、入眠までの過程、目が覚めた回数、その後の対応。同じように見える夜でも、細部は異なっていた。就寝の90分前に運動すると、夜中の覚醒が減る傾向。でも絶対ではない。室温と湿度も関わっているのか。朝日を浴びるタイミングは。
答えはまだ、手帳の中に完成した形では存在しない。
だが、それでいいのだと気づいた。完成された正解を探すのではなく、自分の夜と朝の間に何があるのかを知ること。その営みそのものが、少しずつ毎日を変えていた。
先週は、夜中に4回目が覚めた夜が3日あった。今週はそれが1日に減った。完全に眠り通せた夜は、まだ来ていない。だが朝を迎える体の状態は、明らかに違う。
スマートフォンを手にして、あのコメント欄を見る気持ちは、もうない。共感の中で沈むのではなく、自分の夜を記述していく行為の方が、ずっと朝に近い気がした。
これは解決の物語ではなく、試行錯誤の物語だ。だからこそ続いていくのだと感じた。
明日の夜も、記録を続けよう。目が覚めたら、また試してみよう。失敗も含めて、すべてが地図になる。
朝までの道のりは、まだ続いている。
でも今は、それで十分だった。
(完)
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