第6話
選ぶことの重さ、選べることの喜び
給与が振り込まれ、控除上限額の確認画面を眺めながら、僕は三つ目の選択肢をまだ決めていなかった。
妻の言葉は的確だった。返礼品を選ぶことも、貯蓄に回すことも、結局は家計管理の一部だ。その理屈は間違っていない。しかし問題は、理屈だけでは説明できない違和感にある。
思い返してみると、ふるさと納税の手続きを始めたころの自分は、返礼品のカタログを眺める時間そのものが、ささやかな楽しみだった。それは「何が必要か」ではなく「何が欲しいか」という、まったく別の問いかけだったのだ。
スマートフォンの画面をスクロールしながら、ふと気づく。これまで給与の使途について、自分たちは選ぶ余地を持たなかった。固定費があり、生活費があり、残ったわずかを貯蓄する。その流れの中で「選ぶ」という経験が、どれほど希薄だったか。
なのに今、僕たちは選んでいる。日用品か、お米か、それとも何か別のものか。その選択が家計管理に組み込まれているからこそ、余計に引っかかるのかもしれない。
妻がソファから顔を上げた。「今月、実家に帰ろうか」。その言葉は、三つ目の選択肢とは無関係に見えて、実は深く結びついているように感じた。
ふるさと納税という仕組みの中で、僕たちは「計画する」ことを学び始めていた。だが同時に、計画では測れない何かについても考え始めていた。
続きはまもなく
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