山靴が語ること

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第2話

靴を履いて歩く

結局その日は、勧められた靴を履いて店の周辺を歩いてみることにした。中年の男性は去って行ったが、彼の言葉は頭の中に残っていた。

靴を履いた足は、思っていたより軽かった。値段に見合う高級感があるわけではなく、むしろ地味だ。だが歩くたびに、足がしっかり地面を捉えている感覚がある。それが何を意味するのか、まだ言葉にはできなかった。

店に戻ると、店員は「どうでしたか」と聞いてきた。僕は「良いと思います」と答えたが、その答えの曖昧さに自分でも戸惑った。良いとは何か。値段か、デザインか、それとも何か別のものか。

「初めての山行は、どこを予定されていますか」と店員が重ねて聞いた。僕は計画していた山の名前を言った。標高は高くなく、初心者向けとされている山だ。

「でしたら、この靴でいいと思います。ただ、大事なのは靴ではなくて、靴を選ぶ判断基準です。自分がどんな山に登るのか、どのくらい歩くのか、足にどんな負担がかかるのか。それを知らないままに『良い靴』を選ぶことはできないんです」

その言葉は、先ほどの中年男性の話と響き合っていた。装備は結果ではなく、登山者自身の経験と向き合い方の表現なのだ。

レジに向かう前に、僕は一度だけ靴を脱いで、その中を確認した。特に変わったところはない。ただ、この靴が最初の一歩になるという実感が、初めて湧き上がってきた。

続きはまもなく

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