数字の迷宮

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第2話

数字が語らないこと

配属から一週間が過ぎた頃、別の案件が舞い込んできた。顧客満足度調査の結果をまとめるという仕事だ。アンケート回答は三百件。そこから導き出された平均スコアは七十八点。資料には『高い満足度を実現』と太字で書かれていた。

前回のグラフ事件がなければ、素直に受け取っていただろう。だが今の自分には、その数字の背後に何があるのか、もっと詳しく見たい衝動が湧いていた。

回答データの一覧表を眺めてみた。七十点台の評価が最も多いのはたしかだ。ところが、細かく見ると分布が二つに割れている。八十点以上の高評価層と、五十点以下の低評価層。その間に大きな谷がある。平均を取れば七十八点だが、その数字は実際には『多くの人が感じている満足度』を表していない。

正規分布していないデータを平均値で代表させることの危うさ。それに気づいた時、前話で感じた違和感の正体が、少し見えた気がした。

上司に報告する前に、念のため中央値も計算してみた。すると六十五点。平均と中央値の乖離は、回答の中に極端な値があることを示唆している。資料に『高い満足度』と書く根拠は、本当はどこにあるのか。

同期に相談してみると、『平均値で出すのは慣例だから』との返答。慣例。それは、もしかして思考停止の別名ではないか。

その夜、改めてデータ全体を見直してみた。回答者の属性はどうなっているのか。年代別、利用歴別に分けたら、満足度は変わるのではないか。そうした視点を持つと、同じ三百件のデータでも、全く異なる物語が浮かび上がってくる。

数字は、見る人の問いかけ方によって、その表情を変えるのだ。

続きはまもなく

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