第1話
第一話 グラフの向こう側
新しい部門に配属されて三日目のこと、上司から一枚の資料を渡された。売上の推移を示すグラフで、ぱっと見は右肩上がり。数字としても前年比で確かに増えている。ところが、そのグラフをしばらく眺めていると、妙な違和感が頭をもたげた。
横軸の間隔を見直してみる。なぜか年初の三ヶ月は狭く、年末の三ヶ月は広く描かれている。同じ期間なのに。縦軸も確認してみたら、ゼロから始まらず、ある数字から始まっていた。本来なら緩やかな上昇も、この見せ方だと急騰して見える。
別室で同期に話しかけてみた。「このグラフ、おかしくないですか」と。同期は首をかしげた。「説得力ありますけど」。その一言が引っかかった。説得力と正確さは、必ずしも一致しないのではないか。
その夜、ネットで検索してみると、こうした表現技法について書かれた記事が山のようにある。意図的でなくても、作り手の無意識の選択が数字の印象を大きく変える。逆に、意図的にそれを操作することだって容易だ。
月曜日の会議で、グラフについて質問を出した。すると上司から「基本的には正確ですから問題ありません」との返答。確かに数字自体は嘘ではない。けれど、数字と、それを見る人の受け取り方の間には、思った以上に大きな隙間があるらしい。その隙間について、もっと知りたくなった。
続きはまもなく
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