第5話
第5話 「完了」の呪いを解く
揺らぎが学習の一部だと思えるようになってから、僕は小さな変化に気づき始めた。
それは、学習ノートの取り方だった。以前なら、講座の内容を完璧に書き写すことに必死だった。でも今は、わからなかったことだけを記す。疑問のまま残す。すると不思議と、その疑問が別の学習で答えを見つけることがある。点と点が、勝手につながっていくような感覚だ。
ある日、研究室に出入りしている大学院生・山田さんに、この話をした。彼は笑って、「あ、それ大事。その状態をキープするのが難しいんだよ」と言った。
「というと?」
「講座業界は『完了』を売ってる。修了証、バッジ、『この講座を終わらせたあなたはプロです』みたいなメッセージ。それが心地いいから、人は次々と買う。だけど本当のエンジニアリングって、問題が終わらない仕事なんだ。完了しない状態に耐える力が必要なんだよ」
その言葉は、僕の胸に落ちた。同時に、新しい不安も生まれた。
完了しない学習に耐えられるのか。周囲がどんどん講座を終わらせていく中で、自分だけ途中のままでいられるのか。先輩たちが持っているような「修了証」を持たずに、面接に行けるのか。
そんなとき、母からLINEが来た。「最近、どう?スクール、申し込んだ?」
キーボードを握る手が止まった。今、どう答えるべきか。まだ答えが出ていない。ただ、少し違う道を歩み始めたことだけは確かだ。
しかし、その道の先に何があるのかは、まだ見えていない。
続きはまもなく
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